世界の気象災害、50年間で5倍に 経済損失は3.6兆ドル=世界気象機関

Source: BBC News|Author: Matt McGrath (Environment Editor)|Date: 09/13/2021

世界気象機関(WMO)は8月31日、暴風雨や洪水、干ばつといった世界の気象災害の数が過去50年間で5倍に増加したと発表した。一方で、こうした災害による死者は激減したという。

世界気象機関(WMO)は8月31日、暴風雨や洪水、干ばつといった世界の気象災害の数が過去50年間で5倍に増加したと発表した。一方で、こうした災害による死者は激減したという。

科学者たちは、気候変動や異常気象の発生頻度の高まりなどが気象災害の増加につながったとしている。

ただ、警報システムの改善により死者数は抑えられている。

ここ数十年で地球の気温が上昇したことで、異常気象や極端な降水量による災害の数が大幅に増加している。

WMOが発表した、災害の規模を示す最新の評価によると、1970年から2019年までの50年間で1万1000件以上の災害が発生。200万人以上が死亡し、経済損失は3兆6400億ドル(約400兆円)に達した。

バングラデシュではここ数十年で、洪水により大勢が死亡し、経済が打撃を受けている

バングラデシュではここ数十年で、洪水により大勢が死亡し、経済が打撃を受けている

WMOのペッテリ・ターラス事務局長は、「気候変動の影響で、世界の多くの地域で気象や気候、降水量における極端な現象が増加しており、今後その頻度と深刻さは増すだろう」と述べた。

「これは、欧州や北米で最近観測されたような熱波や干ばつ、森林火災が増加していることを意味する。また、大気中の水蒸気量が増え、極端な降雨や致命的な洪水の悪化につながっている。海水温の上昇は、最も激しい暴風雨の発生頻度や発生地域に影響を及ぼしている」

気象災害による死者の90%以上は、発展途上国で確認されている。

干ばつによる死者数が最も多く、約65万人が亡くなっている。また、高温により死亡した人は5万6000人近くに上った。

1970年から2019年までの気象災害の影響。上段は気象災害の発生件数、中段は死者数、下段は経済損失(500は5000億ドル、1,000は1兆ドル) 出典:世界気象機関(WMO)2021年報告書

1970年から2019年までの気象災害の影響。上段は気象災害の発生件数、中段は死者数、下段は経済損失(500は5000億ドル、1,000は1兆ドル) 出典:世界気象機関(WMO)2021年報告書

ただ、こうした災害による死者数は、過去50年間で急速に減った。

「この厳しい統計の裏には、希望のメッセージが隠れている」と、WMOのターラス事務局長は述べた。

「複合災害の早期警報システムの改善により、死者数は大幅に減少している。簡単に言うと、私たちはこれまで以上に人の命を救えるようになっている」

異常気象が増え続ける中、より多くの人命が救われた一方で、経済損失は拡大している。

2010年から2019年までの10年間に報告された損失額は、1日あたり約3億8300万ドル(約421億3000万円)で、1970年から1979年までの10年間の1日あたり4900万ドル(約53億9000万円)から7倍に膨れ上がった。

大きな損失を生んだ2017年

米テキサス州キングウッドは2017年のハリケーン「ハーヴィー」で大打撃を受けた

米テキサス州キングウッドは2017年のハリケーン「ハーヴィー」で大打撃を受けた

経済に最も大きな影響をもたらした、3つの極端な気象災害はすべて2017年に発生した。ハリケーン「ハーヴィー」、「マリア」、「イルマ」はこの年、アメリカ本土を襲った。この3つの災害による経済損失は、1970年から2019年の間に発生した、上位10位までの災害による損失の総額の35%にあたる規模だった。

経済損失が最も大きかった10大災害は次の通り。

  • ハリケーン「カトリーナ」:2005年(アメリカ)、1636億1000万ドル

  • ハリケーン「ハーヴィー」:2017年(アメリカ)、969億4000万ドル

  • ハリケーン「マリア」:2017年(アメリカ)、693億9000万ドル

  • ハリケーン「イルマ」:2017年(アメリカ)、581億6000万ドル

  • ハリケーン「サンディ」:2012年(アメリカ)、544億7000万ドル

  • ハリケーン「アンドリュー」:1992年(アメリカ)、482億7000万ドル

  • 洪水:1998年(中国)、470億2000万ドル

  • 洪水:2011年(タイ)、454億6000万ドル

  • ハリケーン「アイク」:2008年(アメリカ)、356億3000万ドル

  • 洪水:1995年(北朝鮮)、251億7000万ドル

WMOは、警報システムが改善され人命が救われつつある一方で、まだまだやるべきことはあると指摘している。

WMOの加盟193カ国のうち、複合災害の早期警報システムを導入しているのは半数にとどまっている。

2017年のハリケーン「イルマ」はカリブ海地域と米本土の一部に破壊的被害をもたらした

2017年のハリケーン「イルマ」はカリブ海地域と米本土の一部に破壊的被害をもたらした

また、アフリカ、ラテンアメリカの一部、太平洋・カリブ海の島国では、気象・水文観測ネットワークに大きな地域差がある。

水鳥真美・国連事務総長特別代表(防災担当)は、早期警報システムのおかげで多くの人命が救われている一方で、災害の危険がある地域で人口や気象現象の激しさ、頻度が増しており、災害リスクにさらされる人が増えている事実もあると指摘した。

水鳥氏は、洪水や暴風雨、干ばつによって毎年多くの人が避難を余儀なくされているという、慢性的な問題に取り組むには、さらなる国際協力が必要だとした。

また、気候変動適応策が国や地域の災害リスク軽減戦略に組み込まれるよう、包括的な災害リスク管理への投資を拡大する必要があるとも述べた。

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