世界の気象災害、50年間で5倍に 経済損失は3.6兆ドル=世界気象機関
Source: BBC News|Author: Matt McGrath (Environment Editor)|Date: 09/13/2021
科学者たちは、気候変動や異常気象の発生頻度の高まりなどが気象災害の増加につながったとしている。
ただ、警報システムの改善により死者数は抑えられている。
ここ数十年で地球の気温が上昇したことで、異常気象や極端な降水量による災害の数が大幅に増加している。
WMOが発表した、災害の規模を示す最新の評価によると、1970年から2019年までの50年間で1万1000件以上の災害が発生。200万人以上が死亡し、経済損失は3兆6400億ドル(約400兆円)に達した。
WMOのペッテリ・ターラス事務局長は、「気候変動の影響で、世界の多くの地域で気象や気候、降水量における極端な現象が増加しており、今後その頻度と深刻さは増すだろう」と述べた。
「これは、欧州や北米で最近観測されたような熱波や干ばつ、森林火災が増加していることを意味する。また、大気中の水蒸気量が増え、極端な降雨や致命的な洪水の悪化につながっている。海水温の上昇は、最も激しい暴風雨の発生頻度や発生地域に影響を及ぼしている」
気象災害による死者の90%以上は、発展途上国で確認されている。
干ばつによる死者数が最も多く、約65万人が亡くなっている。また、高温により死亡した人は5万6000人近くに上った。
ただ、こうした災害による死者数は、過去50年間で急速に減った。
「この厳しい統計の裏には、希望のメッセージが隠れている」と、WMOのターラス事務局長は述べた。
「複合災害の早期警報システムの改善により、死者数は大幅に減少している。簡単に言うと、私たちはこれまで以上に人の命を救えるようになっている」
異常気象が増え続ける中、より多くの人命が救われた一方で、経済損失は拡大している。
2010年から2019年までの10年間に報告された損失額は、1日あたり約3億8300万ドル(約421億3000万円)で、1970年から1979年までの10年間の1日あたり4900万ドル(約53億9000万円)から7倍に膨れ上がった。
大きな損失を生んだ2017年
経済に最も大きな影響をもたらした、3つの極端な気象災害はすべて2017年に発生した。ハリケーン「ハーヴィー」、「マリア」、「イルマ」はこの年、アメリカ本土を襲った。この3つの災害による経済損失は、1970年から2019年の間に発生した、上位10位までの災害による損失の総額の35%にあたる規模だった。
経済損失が最も大きかった10大災害は次の通り。
ハリケーン「カトリーナ」:2005年(アメリカ)、1636億1000万ドル
ハリケーン「ハーヴィー」:2017年(アメリカ)、969億4000万ドル
ハリケーン「マリア」:2017年(アメリカ)、693億9000万ドル
ハリケーン「イルマ」:2017年(アメリカ)、581億6000万ドル
ハリケーン「サンディ」:2012年(アメリカ)、544億7000万ドル
ハリケーン「アンドリュー」:1992年(アメリカ)、482億7000万ドル
洪水:1998年(中国)、470億2000万ドル
洪水:2011年(タイ)、454億6000万ドル
ハリケーン「アイク」:2008年(アメリカ)、356億3000万ドル
洪水:1995年(北朝鮮)、251億7000万ドル
WMOは、警報システムが改善され人命が救われつつある一方で、まだまだやるべきことはあると指摘している。
WMOの加盟193カ国のうち、複合災害の早期警報システムを導入しているのは半数にとどまっている。
また、アフリカ、ラテンアメリカの一部、太平洋・カリブ海の島国では、気象・水文観測ネットワークに大きな地域差がある。
水鳥真美・国連事務総長特別代表(防災担当)は、早期警報システムのおかげで多くの人命が救われている一方で、災害の危険がある地域で人口や気象現象の激しさ、頻度が増しており、災害リスクにさらされる人が増えている事実もあると指摘した。
水鳥氏は、洪水や暴風雨、干ばつによって毎年多くの人が避難を余儀なくされているという、慢性的な問題に取り組むには、さらなる国際協力が必要だとした。
また、気候変動適応策が国や地域の災害リスク軽減戦略に組み込まれるよう、包括的な災害リスク管理への投資を拡大する必要があるとも述べた。