「地球に優しい」ほかオルタナが使わない表現

Source: Yahoo JP

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米コンデナスト社が最近、サステナビリティをめぐる用語の使用について再考したそうです。(WWD記事:「『地球に優しい』って本当? ビューティ誌「アルーア」がサステナビリティについて幾つかの表現を廃止」)(オルタナ編集長=森 摂)

記事によると、「多くのプラスチックの容器がリサイクル可能ではあるものの、実際9%ほどしかリサイクルされていないという報告をもとに、『リサイクルが可能なプラスチック』という言葉の使用をやめる」とのことです。

このほか、「地球に優しい」「環境に優しい」「エコフレンドリー」「生分解性」などの表現も、雑誌内での使用を禁止にするそうです。

「生分解性は微生物の働きによって製品や素材が無機物まで分解されることを指すが、この働きに時間の制限を明記していないことや、ほとんどのゴミ処理に使われる埋立地には分解に要する十分な酸素が足りていない」(同記事)

「地球に優しい」「環境に優しい」という言葉は、オルタナも創刊以来、使用禁止にしています。「優しい」という言葉が科学的でないのが最大の理由ですが、そもそも「地球に優しい」とはどういう意味なのでしょうか。

ここで思い出すのが、元サッカー日本代表監督の岡田武史さんとのインタビューです。2010年と、かなり前の取材ですが、その内容は今でも埃をかぶっていません。

■岡田武史さんの環境論「大変なのは地球ではなく人間」

――岡田さんは環境問題についてはどうお考えですか。

「地球環境が大変だといっても、実は地球はまったく平気で、人間が大変なだけです。地球というのは誕生以来、どんどん変化していくもので、それに適応していくのが、僕ら生物なのです」

「しかし、この200年、地球の気候変動が急激になったために人間社会が適応しづらくなった。それをスローダウンさせる活動が一般的に環境活動と言われています。僕はそれも大切だと思いますが、逆に、人間や社会が地球環境の変化に適応していくのも、立派な環境活動だと思います」

そう、気候変動で平均気温が3℃上がろうが、4℃上がろうが、地球はびくともしません。滅びるのは人間の方です。「地球に優しい」とか「地球を守ろう」とは、大変おこがましい考え方なのです。

この取材をした2010年ごろ、盛んに言われていたのが「北極のシロクマを守ろう」というフレーズです。この10数年、実際に北極の氷は解け続け、ホッキョクグマは2100年までに絶滅の恐れがあるといいます。

ところがそのホッキョクグマが北極を離れて、アラスカやロシアの村を襲うという「事件」が起きるようになりました。

「ロシアではこの数カ月、50頭を超えるホッキョクグマが住宅やオフィスに侵入し、人を攻撃する例も確認されており、当局が非常事態宣言を発令した」(2019年2月12日のニュースウィーク日本版記事)。

ロシアの現地では「最善の対処法を考え出すため、専門家グループが現地に派遣される予定だが、やむを得ない場合には殺処分の可能性も排除していない」(同記事)そうです。

最近、「北極のシロクマを守ろう」というフレーズを聞くことも少なくなりました。人間は、その時々の都合によって、「守ろう」と言ったり、殺したりするのです。私たちは、この大きな矛盾に向き合わなければなりません。こうした状況の中で、私たちも、使い捨てになりそうな表現には気を付けたいものです。

「リサイクルが可能なプラスチック」「生分解性のプラスチック」については、オルタナの記事にも多く見受けられます。こうした表現については、米コンデナスト社の判断に賛同し、オルタナも今後は、さらに正確な情報発信を心掛けていきたいと考えます。

最後にもう一つ、私が使わない表現に「欧米」があります。実際に欧州や米国に住んだことがある人には理解頂けると思いますが、欧州と米国には共通点は多いものの、思考や文化が全く違うところもあります。それらを「いっしょくた」にして、「欧米」という言葉で括るのは乱暴です。

米国や欧州だけでなく、アジアなど他地域にも先進事例は多いのです。韓国では、1994年から「使い捨てプラスチック」を規制し始めました。中国がレジ袋を有料化したのは2008年のことです。学ぶ先は、欧米だけではありません。

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