英イングランド、使い捨てプラスチックの容器やフォークなど禁止へ 今年10月から
Source :BBC|Author : ジョージーナ・ラナード、気候・科学担当記者|Date: 01/2023
イギリス政府は14日、今年10月からイングランドで、プラスチック製の使い捨て容器やフォーク、スプーンなどを禁止すると発表した。スコットランドとウェールズの両自治政府はすでに2021年に、同様の禁止措置を導入している。脱プラスチックの措置に困惑する店舗、進んで対策をとる店舗に話を聞いた。
環境・食糧・農村地域省によると、10月から使用が禁止されるのはプラスチック製で使い捨て用の皿、トレー、ボウル、フォーク、スプーン、ナイフ、一部のポリスチレン製コップや容器など。
同省によると、イングランドでは年間27億本の使い捨てカトラリー(ナイフ、フォーク、スプーンなど)と7億2100万枚の使い捨て皿が使用される。カトラリーのほとんどがプラスチック製で、全体のリサイクル率は10%にとどまっている。27億本のカトラリーを縦に並べれば、1本が15センチだとして、地球を8回半、ぐるりと回ることになるという。
同省は、「プラスチック公害は、分解するのに何百年もかかり、海や川や土壌に深刻な害をもたらす。さらに、プラスチックは製造から処分に至るまで、大量の温室効果ガスの発生源にもなっている」と説明した。
イングランドの消費者は今年10月から、禁止対象の使い捨てプラスチック容器やカトラリーを、小売店や飲食店、テイクアウト店などから買うことができなくなるという。
テイクアウトへの影響は
複数の環境保護団体は政府のこの動きを歓迎すると共に、埋め立て地に送られる使い捨て容器への対策強化は可能だと指摘した。
他方、テイクアウト業界団体ブリティッシュ・テイクアウェイ・キャンペーンはBBCに対して、業者が政府決定を実施するには支援が必要だと話した。
同団体の副委員長で、北部ランカシャーでフィッシュ・アンド・チップス店を経営するアンドリュー・クルックさんは、プラスチックの容器やカトラリーから代替品に切り替えるにはコストがかかるため、テイクアウトを提供する店舗を経営する小規模事業者は、その費用を価格に上乗せするしかないだろうと話す。
「環境のため、自分たちにできることはするべきだと思っているが、小規模事業のほとんどはぎりぎりのところで何とかしがみついている状態」にあるのだと、クルックさんは話した。
テイクアウト業界では今やプラスチックを含まない容器や包装が主流となっているものの、1個あたり12ペンス(約19円)高くつくのだという。
ロンドンでケバブ店を経営するイルボさん(取材に対して、姓は明らかにしなかった)は、費用の高騰と利用客の減少が心配だと話した。テイクアウトのハンバーガーやケバブ、フライドポテトなどを提供するイルボさんは、「容器を替えるには費用がかかる。自分自身もプラスチックは好きじゃないし、選択の余地があるなら使わない。でも、だったらケバブを何に入れたらいい?」と、BBCに話した。
再利用できるテイクアウト容器
すでに使い捨てプラスチックを使わなくなったカフェもある。ロンドンで「E5ベイクハウス」を経営するルイーズ・ラトゥールさんは、「私たちにとっては、とてもポジティブな展開だ」と話した。
このカフェは約5年前に脱プラスチックに移行し、2021年には使い捨てカップも完全に使わなくなった。現在は、堆肥(たいひ)化可能な生物分解性容器や、再利用可能なカップやテイクアウト用の箱を使っている。
パンやランチなどをカウンターで売っているヘレン・ヴァンデンホーテさんは、テイクアウトに使う缶を見せてくれた。利用客はまず缶を買い、そこに入れるテイクアウト料理を注文し、缶を次回も使うのだという。
この仕組みを最初に導入した当初は、缶の容器は「とても人気」だったもの、今ではそれほど活用されていないという。客は今でも便利な方を選ぶようだと、ヴァンデンホーテさんは言う。
堆肥化可能な容器は割高なため、「テイクアウト容器をどう使うか、前より慎重になっているので、ごみを減らすことにつながっているのかもしれない」と、ヴァンデンホーテさんさんは話す。
店内で話を聞いている最中に、運搬用自転車が前に停まった。ダニロ・ポンゼッタさんは自転車から降りると、再利用カップがたくさん入った箱を店内から運び出して、自転車に積んだ。
「E5ベイクハウス」は利用客に自前カップの持参を推奨しているものの、忘れた人は、スタートアップ企業「リユーザー」が提供する再利用カップを使うことができる。ロンドンでは現在、複数の企業がこのサービスを提供している。
利用者はアプリをダウンロードしてカップをスキャンし、コーヒーなどを飲み終わったら、10日以内に返却するか、代金を払う。リユーザー社がカップを回収し、洗い、またカフェに戻す。
リユーザー社のアンドリュー・マシューズCEOは、この取り組みのおかげで、約6万個の使い捨てカップがごみの埋め立て地に行かずに済んだと話す。
ヴァンデンホーテさんによると、利用客は当初は余計な手間に戸惑っていたようだが、「新しい仕組みの手間を乗り越えてしまえば、皆さんだいたいそれに納得する。今ではこの店ではこれが当たり前のやり方になった」という。
ラトゥールさんは、脱プラスチックへの移行に伴うリスクは非常に不安だったとして、事業者がもっと環境に配慮できるよう政府が支援を拡大するのが望ましいと話した。
気候変動に取り組むNGO「WRAP」のヘレン・バードさんは、「材料がなんだろうとあらゆる使い捨て製品は環境に影響すると、誰もが留意する必要がある」と指摘する。プラスチック以外の他の容器についても、今後さらに対策が導入されるだろうとも話した。
環境保護団体グリーンピースは、「今回の発表は本当に、巨大な問題の周辺をつまんでいるだけにすぎない」として、スーパーの再利用事業について政府が目標値を設定するよう呼びかけた。
環境・食糧・農村地域省は、飲み物の容器について回収を促すデポジット制度を検討しているという。