動物の皮ではなく、植物を原料に使った人口の革……環境にやさしいりんごレザー

Source : 朝日小学生新聞|Author : 戸井田紗耶香|Date:12/2022

りんごレザーで試作したバッグ (朝日新聞)

動物の皮ではなく、植物を原料に使った「ビーガンレザー(人工の革)」が登場し、注目されています。長野県飯綱町で、りんごレザー作りに取り組む会社SORENAの伊藤優里さんに聞きました。

しぼりかすや傷ついた実 廃棄せず活用
長野県飯綱町で共同開発が進む

傷のついたりんご (朝日新聞)

捨てられるりんごや皮 (朝日新聞)

りんごレザーは、りんごの皮やしんなどを乾燥させて、粉にしたものが原料の一部に使われます。伊藤さんが飯綱町やメーカーの共和レザーと共同で開発するりんごレザーは、りんごの配合率が多いのが特徴です。「長野県は全国でも有数のりんごの産地。飯綱町は、りんごジュースやシードル(りんごのお酒)作りがさかんで、たくさんのしぼりかすが出ます。これらを活用して環境にやさしい革を作ることを目指しています」と伊藤さん。

 傷のついたりんごや、形が悪くて売れないりんごも材料にするそうです。「工場でりんごレザーを焼きあげる工程では、アップルパイの香りがするんですよ」と笑います。来年4月の商品化を目指しています。

りんごジュースやりんごのお酒作りで出るしぼりかす(朝日新聞)

りんごの粉 (朝日新聞)

農家の思いも知って

 伊藤さんは元々、ジャムなどを作る食品加工の会社で働いていました。せっかく仕入れたフルーツも、暑さなどで傷むと捨てなければならず、食品廃棄の問題に心を痛めてきました。りんごレザーを通して「捨てられてしまうりんごが、職人の高い技術力で商品に姿を変えることは本当にうれしい」と話します。

 「りんご農家の人たちは、まるで赤ちゃんを育てるように細やかに世話をして、りんごを育てています。それでも、鳥につつかれたり、日に焼けてしまったりして売れないりんごはできてしまう。そうした生産者の苦労やよろこびも知ってほしいですね」

植物を使い、石油由来の原料減らす
原料にまぜてバッグや財布、座席シートに

 りんごやパイナップル、サボテンなどから作られる「ビーガンレザー」。バッグや財布、自動車や飛行機の座席のシートにも使われています。ビーガンとは肉や魚、乳製品を食べず、動物を使う製品をさける人のこと。そこから名前がつきました。

 「人工皮革の中でも、植物を原料に使った革を、あえてビーガンレザーと呼んでいます。ここ数年で定着してきました」と、革製品の製造や輸入販売をする会社ナダヤの武山大輝さん。

 背景にあるのが、環境意識の高まりです。「人工の革は、布に合成樹脂をぬって作ります。合成樹脂は原料に石油を使うので、できるだけ石油由来の原料を減らそうという目的で生まれたのがビーガンレザーです」

りんご農家と協力する伊藤優里さん (朝日新聞)

りんごレザーはしっとりした手ざわりが特徴 (朝日新聞)

牛や馬などの皮を加工
本革には長持ちのよさ

 本革や毛皮など、動物性の素材を使わないようにしよう、という「アニマルフリー」の考え方も、ビーガンレザー誕生の背景にあると武山さんはいいます。

 でも、私たちの身近に革製品はたくさんあります。牛や馬など動物の皮を加工した本革を使うことは環境に悪いのでしょうか? 武山さんは「本革が環境に悪いとはいえない」と話します。

 「私たちがふだん目にする本革は、食べるために殺された動物の皮を有効利用したもの。革の寿命でくらべると、人工皮革がおよそ3年、本革は手入れをすると数十年もつこともあります。ひとつのものを、大切に長く使い続けられるのが本革のよさです」


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